ベンチャー企業が価値を創るIoT

大手企業が中心となって活発化してきたIoT(モノのインターネット)産業に、ベンチャー企業の芽が出始めてきた。「IoT」という言葉が米調査会社ガートナーのハイプサイクル(特定技術の成熟度や社会への適用度の変化を示す図)に初めて登場したのは2011年である。
それから約5年、ドイツ政府が12年から本格化させた「Industrie4.0」や、14年に設立された米国「IIC(Industrial InternetConsortium)」、15年の中国政府「中国製造2025」など、製造業へのIoT 適用が注目された。また、シンガポールや台湾、インドなど、アジア地域では都市政策にIoT 技術を用いる「スマートシティ構想」が強化されるなど、既存インフラの高度化がIoT産業の本流であった。
技術の世界標準規格を確立すべく、ハード端末から上位システムまで一社が独占して携わるのではなく、様々な分野に強みを持つ大手企業が連合を組んだため、ベンチャー企業の参入余地は小さいと見られた。
しかし、以下のような3つの分野において、特有の技術を用いたベンチャー企業の登場が相次いでいる。
第1に、基盤(プラットフォーム)技術を提供する分野である。インフラに多数のセンサーを含めた機器をクラウド接続する際、セキュリティやスマートフォンとの連携といった課題が出てきている。独自技術によるMVNO(仮想移動体通信事業者)やクラウドサービスなど、IoT 基盤構築に特化したベンチャー企業が躍進している。
第2に、「AI(機械学習)」によるデータ処理分野である。モノから大量データを収集するまでは大手企業の領域だが、データをどう活用するかが課題となる。AI を得意とする技術者は限られるほか、機械学習は万能ではないため、同分野に特化したベンチャー企業が増加している。
第3に、モノと接続する新たな通信技術分野である。通信ノイズの多い工場内や通常の無線技術が適用しづらい領域に対し、電力線を活用した有線接続や、ノイズとセキュリティに強い可視光通信、低電力中距離無線通信の「LP-WAN」が注目される。
IoT 産業は、既存設備の多様性に対し、すり合わせ技術が重要になっている。特殊技術や機動力を武器としたベンチャー企業の存在が益々大きくなることでしょう。
2016/06/20 8:10

野村證券資料より