三菱製鋼(5632)【「特殊鋼をつくり加工する」会社から「付加価値を素材から創る」会社へ設備投資拡大

三菱製鋼  [5632] 東証1部 時価:180円

自動車用ばねなどの特殊鋼大手、三菱製鋼(5632)は研究開発機能の拡充に向け、設備投資に3年で約260億円、M&A枠210億円を投じる。鉄鋼の結晶構造を観察したり不純物を自動解析したりする設備などを導入。これまで手薄だった1ナノ(ナノは10億分の1)メートルレベルでの微細な解析を高め、鉄鋼品の強度や耐熱性などの品質を向上させ、競争力を高め、世界で高まる需要を取り込む方針です。
 技術開発センター(千葉県市原市)に設備を大規模に導入する。特殊鋼は金属の成分調整や温度変化、圧延によって強度や加工しやすさなどが変わる。設備投資は主にそうした内部の組織を観察したり、解析する機器に充てたりする。クロムやマンガンなど金属元素が発する固有のX線を拾うことで元素の分布や密度などを特定する装置や、鋼材を引っ張ったり圧縮したりして結晶構造の変化を解析する計器などを設置する。これまで同社は強度や延性、耐熱性など品質の決め手となる組織解析の研究が手薄だった。
 解析データは製鋼工程で投入する金属の成分調整や温度制御に活用でき、品質を高められる。試作品作りに弾みをつけるため、「VIM」と呼ばれる真空中で金属を溶解させる専用炉を10億円投じて導入する。
 世界各地のものづくりの現場で3D(3次元)プリンターの活用も盛り上がっていることから、造形効率の高い金属粉末を開発する設備も取り入れる。粒の形状など熱に溶けやすく流動しやすい10マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル単位の粉末を実用化する。
 同社にとり過去最大の研究開発投資を進める背景にはばね事業の世界展開がある。インドネシアでは製鋼から圧延、商用車用のばね製品まで一貫して手掛けられる体制が近く整う。メキシコでも工場新設を決めた。特殊鋼の母材を海外で現地調達する比率は一段と高まるが、母材の品質は最終製品のばねに割れなどを生じさせない水準が要求されるために解析などの能力を磨く。
 同社は2016年度を初年度とする中期経営計画(5ヵ年計画)を策定しており、21年3月期に売上高1700億円(前期実績60%増)、営業利益90億円(同2,1倍)、ROE8%(同4,2%)、海外売上比率47%を目指しており、ばね事業だけで売上高630億円と16年3月期に比べ3割強高める計画です。規模だけでなく品質との両立を図り、積極投資により成長を目指しており注目したい。
2016/10/14 8:30